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新美術世界 / MAHO KUBOTA

先月ニューヨークに行った際、時間があったのでMOMAに立ち寄ったら「抽象表現主義(
Abstract Expressionism)」の大規模な展覧会をやっていた。

motherwell.jpg


抽象表現主義の絵ってかなり好きだ。
ってより、絵を見る面白さ、メソッドを最初に教えてくれたのは抽象表現主義かもしれない。
だいたいにして作品は馬鹿でかい。でもこのヒューマンスケールを超えた大きなフォーマットにこそ抽象表現主義絵画の秘密が隠れている。

スターアーティストは当然ポロックにロスコ、スティルといったところだろう。
こうして展覧会で作品と向き合ってみても圧倒されるし、王道だと思う。
一方抽象表現主義の始祖とされているゴーキーの絵も別の意味で心に迫ってきて、ああ本当にいい絵だな、と思うものが何点かあった。

でも個人的に一番好きな画家はなんといってもロバート・マザウェルだ。
抽象表現主義の中では知名度ではスターアーティストにはおとるけれど、この人の絵は独特で、前時代をひきずったポエティックなところがありとても好きだ。
ハーバードで哲学のphDをとっているあたり、他のペインターと少々違う立ち位置にいたのかもしれない。アメリカ絵画の巨人、サイ・トゥンブリーはマザウェルに師事したらしいが、そういわれてみるとトゥンブリーの作品にはやはりマザウェル的な意識の流れが見え隠れするような気がする。

マザウェルの作品では「Little Spanish Prison」という小品も好きだけれど、やはりなんといっても「スペイン共和国への挽歌」(Elegy to the Spanish Repulic)のシリーズに圧倒される。
マッシヴな絵だ。この絵は印刷物でみてもまったく理解できないので、ここに図版を引用しないけれど(写真はマザウェルのもっと初期の小品)、ものすごく大胆に黒を使った、本当にマッシヴな絵なのである。
その絵は心を圧倒する、というか私の場合、この絵と向き合うと最初に「息苦しく」なる。
小さい時に見た悪夢のひとつ、意識の中でピンクと黒が対比されて次第に黒がピンクを圧倒する、というかなり哲学的な悪夢だったのだが、それが思い出されて、ちょっと気持ち悪くなる。
でも我慢して絵に向き合ってると、有る瞬間、ふっと気持ちが軽くなって、それから不思議な安堵感が現れる。
心に結びつけられた重りの重さはかわらないけれど、でもその宿命的な重さを受け止めて、それから新たな世界の中で呼吸できそうな気がしてくるのだ。

アートは甚大な悲劇の前には無力、とも言われているけれど、
今回MOMAでこの作品と向き合ってみると、ふと腑に落ちる瞬間があった。
人は誰も個人的な心のよりどころとして心の中に「自分の絵」をいくつか所有していると救われる瞬間がある。


Profile

久保田真帆(クボタ・マホ)

MAHO KUBOTA GALLERY ディレクター。ジュリアン・オピー、安部典子、長島有里枝、ブライアン・アルフレッドほか、国内外のアーティストをリプリゼント。ビジュアルアートの範囲にとどまらず広義のカルチャーシーンとつながるギャラリーを目指しています。アーティストマネジメントのほか、パブリックアートプロジェクトや展覧会企画、コーポレート・コレクションのコンサルティングなど幅広くコンテンポラリーアートに関わる毎日。http://www.mahokubota.com

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